スマホ加工した姿が「ありのままの自分になる」時代


週刊SPA!の連載「みうらじゅん×リリー・フランキーのグラビアン魂」を毎週楽しみにしている。

連載は毎週変わるアイドルたちの水着グラビアと2人の雑談で構成されていて、時折、2人の人生訓が入り、はっとさせられる。とはいえ、基本はともに50歳を超えた2人のイチャイチャぶりと変わらぬグラビア、そしてエロへの熱い思いを楽しむコンテンツだ。

9月29日売りの号でグラビアを飾ったのはいとうさやかさん。フォロワー20万人を超えるインスタグラマー。最近リリーさんは美女探しのためにInstagramを使っていて、そこで見つけスタッフにリクエストしたそうだ。

「グラビアン魂」ではいつもは2人が決めたコンセプトでグラビアを撮影するのだけれど、今回起用したいとうさやかさんは本格的なグラビアは初めてで、スタッフへの指示は「可愛く撮ってあげてください」(みうらさん)だけ。インスタの良さを残すため、衣装もいとうさん自身が選んだものを着ることになった。

興味深かったのがSNSで活躍する人のグラビア展開についての2人の会話だ。

リリー「自分で撮って自分で加工しないと自分のブランドが保てない人は、難しいですよね。グラビアはある程度の修正はするけど、アプリは使えないから

みうら「そもそもだけど、オヤジがよく言う『加工している写真より元のほうが可愛いじゃん』って発想がもはや古いんでしょうけどね」

リリー「インスタで見た人に実際に会うと、やっぱり目減りしますもん。でも目減りを感じるのはオヤジだからなんですよ。『写真と違ってあたりまえ』になっているから

芸能界では自己プロデュースや自己メディアが進む一方、オールドメディアであるテレビや雑誌では第三者が介入するので、自分のイメージを崩さずに出るのが難しい。

アイドルに加工アプリについて聞くと…

僕はたまたま昨日、アイドルの方にどんな加工アプリを使うかツイッターで質問していたのだけれど、集まった解答は千差万別。

使うアプリも違えば、重ね使い、服やメイクに合わせてアプリを使い分けるなどそれぞれのアイドルたちが自分の見せ方を追求していて感動した。一人ひとりが自分を高めるプロフェッショナルなのだ。

実際、下手なカメラマンである僕は、自分が撮るよりも女の子たち自身の自撮りの方がかわいいことは痛いほどわかっており、撮影していて恐怖も感じている(苦笑)。正直なところ被写体自身に加工をお願いしたい。

一方でリリーさんが指摘しているように加工がうまくなればうまくなるほど、現実との解離も生じてしまう。その解離をどこまで許すのかもタレントごとの自己プロデュースだ。

とはいえ、これはテレビ、雑誌などオールドメディアへの出演を目的にする子や撮影会などで頻繁にファンと会うグラドルが気にすることだ。自分の活動の現場をSNSに限定すれば、リアルな自分をさらさずにいられる。

最近雑誌グラビアではレイヤーの起用が増えており、生々しさよりも陶器のような肌などコスプレイヤーを活かす加工に傾いている。動画であってもYouTubeであれば、ある程度映像を加工することは可能だ。リアルタイムであっても、Zoom会議でSnap Cameraを使うと年が10歳くらい若返る

そうした加工ありきへと変わる世界のなかでは考え方を変える必要が出てくるだろう。

人間は悪い方にこそリアルを感じる。テレビで見た、雑誌で見た姿が普段のSNSと違ったとき、一気に落胆する。一方で大半の人は一生で芸能人をリアルで見るのは一度や二度程度だ。

そう考えたとき「自分のイメージを崩し、ファン離れを起こすリスクを背負ってまでオールドメディアに出る必要がある?」と考えるタレントが出てもおかしくない。オールドメディアのパワーが落ちてるのだから尚更だ。

リリーさんは対談の中で次のようにも言っている。

加工も当たり前だし、整形もカジュアルだし、「ありのまま」の概念がもう違うんですよ。

それは誰もがそうすべきだと語っていた「なりたい自分になる」こととイコールだ。しかもスマホ一つで。

2013年にヒットした「アナと雪の女王」の歌とは逆に、ありのままの姿でなくなることが自己肯定感を高め「ありのままの自分」に繋がる時代。現実との解離なんて何でもない世界。そんな未来が来る予感がある。

姿の加工が常識になることで外見問題からも自由になる。だって誰もが加工するのなら気にするなんてバカらしい。なんてたくましく、素晴らしいことだろう。

そんな時代を少しも寒くないと捉えるか、それとも寒さを感じるのか。結局あなたの適応力次第だ。

個人的には「すっぴんが一番いいよね」って言ってる人と同じにしか感じないけど。

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