実話誌出身の著者が追うのは漁師とヤクザが密接に絡み合う、人外魔境の密漁の世界。東北を二輪で駆け、築地に潜入し、培った裏社会人脈を駆使して、香港でウナギ密漁の最前線に辿り着く。
時代も場所も超えたアドベンチャーはさながら「密漁が如く」。殴り合いはなくとも興奮必至で、すこぶる面白い。
東映ヤクザ映画のような血みどろの抗争が繰り広げられた暴力都市・銚子。ロシアのスパイ合戦が漁師の悲しみと絡み合う根室。章ごとに描かれるよく聞く地名の裏に流れる物語もも魅力的なら「黒いあまちゃん」「オホーツクの帝王」など登場人物も天然ウニの濃厚さ。ぜひとも白石和彌あたりに映画化してほしい。
ここ最近話題の北方領土についての章は、日本とロシアの間に生きる地元の漁師たちのしたたかさ、そして哀しみが描かれており、政府、反政府派もひとまず読みなさいよと言いたい。
本では流通するアワビやウニの半分が密漁によるものという知られざる事実も明らかになる。一晩で100万円を稼ぐ密漁者だけでなく、読者もまた密漁の恩恵を受けているのだ。
※この記事は雑誌『CONTINUE』に掲載したレビューに加筆したものです。
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