「(相方の)ずっともです」
「つり革につかまりたくないよ。負けた気がするから、もう俺2度と捕まらないわ」
「その感じ見てて」
「御茶ノ水〜、御茶ノ水」
2020年のM-1グランプリで優勝したマヂカルラブリーの野田クリスタルさんが決勝のネタの最中に発した言葉はたったこれだけ。これまで多くの革新的な漫才が披露されたM-1ですがが、“話芸”であることも突き抜けたマヂカルラブリーのファースト、ファイナルラウンドのネタは斬新でした。
一部ファンの間では放送後「あれは漫才なのか」という声も上がりましたが、スピードワゴンの小沢一敬さんはM-1のあった20日、Twitterで「漫才は自由だな。自由はかっこいいな。」とツイート。サンドウィッチマン伊達さんも自身のブログの中で
センターマイクに向かって舞台袖から出てきて『どうも』と始まれ
ば、それは漫才。
漫才の定義なんて、それくらい。
漫才と言うのは………みたいな、そんな難しいもんなんか無い。
面白ければそれで良し。
とマヂカルラブリーの漫才を賞賛しました。
その一方でファイナルラウンドの審査では優勝したマヂカルラブリーに3票、おいでやすこがに2票、見取り図に2票と票が三者に割れ、審査員にとっても審査が難しく、悩ましかった今大会。
7人の審査員は10組の出場者にどんなジャッジを下したんでしょうか。
キーマンだったナイツ塙の審査
表にある標準偏差とはデータのばらつきを見る指標で、大きいほど得点にばらつきがあることを示しています。
今年のM-1でもっとも標準偏差が高かったのはナイツ塙さんで4.403で、松本人志さんの3.071、立川志らくさんの3.048が続きます。今年の審査員7人は2018年から3年連続で同じですが、過去3年とも塙さん、松本さん、志らくさんの3人は標準偏差でいずれも上位と、面白かったコンビとそうでなかったコンビに点差を大きくつけるタイプです。
特に今大会の塙さんは93点以上か87点以下とかなりはっきりした評価をつけていました。
ことしのM-1は上位は640点台、下位は620点台と中間の630点台のいない差が上下がはっきり分かれた大会でしたが、塙さんが93点以上を入れたコンビはすべて640点台、87点以下を入れたコンビはすべて620点台に。ファイナルラウンド進出のキーマンといえる存在でした。
最も勝負を左右しなかった上沼恵美子
今大会で特徴的だったのが上沼恵美子さんの採点です。
標準偏差は7人中最も低い1.101で95〜92点の間でしか点をつけていません。点数面では7人の中で一番勝負を左右しなかった存在と言えます。今大会の審査員を振り返る中で最も面白かったデータです。
上沼さんは2018年のM-1で「大ファン」と語ったミキに98点をつける一方、「ジャルジャルのファンなんですが、ネタは嫌いや」と88点と辛口の点数をつけて番組放送後にネット上で賛否を呼びました。
2018年の標準偏差は4.928と7人のメンバーで最も大きく、過去にも2007年にはPOISON GIRL BANDに81点、2016年にはカミナリに81点、そして2017年にはマヂカルラブリーに83点と辛口の点をつけるなど特徴的なジャッジをする審査員でした。
しかし2018年を境にジャッジが一変。2019年のM-1での標準偏差は2.234と一気に小さくなり、最低点でも90点をつける“甘口”ともいえる審査員に変貌します。そして2020年はさらに点差をつけず、最低でも93点をつける“超甘口審査員”になっていました。
今年も盛り上がったM-1グランプリ。松本人志さんからも史上最高レベルと語られた令和最初の大会はミルクボーイの優勝で幕を閉じました。[embed]https://twitter.com/M1GRANDPRIX/status/12087[…]
上沼さんに続いて標準偏差が1.776と低かったのがオール巨人師匠でした。上沼さん、巨人師匠ともに今回の審査員を一度は固辞するも、番組スタッフの三顧の礼ならぬ「四顧の礼」で再び審査員を引き受けています。厳しいジャッジをすると一般的には思われている大御所2人が差のない審査をしたことに、審査員の重圧を感じるのは私だけでしょうか。
番組にドラマを生んだ上沼さんとマヂカルラブリー
前年2019年のM-1は松本人志さんをして「史上最高レベル」と言われた大会でした。漫才のレベルはもちろんなのですが、番組を一つのドラマとして考えた場合も最高レベルだったと思います。
2番手で出てきたかまいたちが660点の高得点で一気に場を温め、敗者復活から勝ち上がった和牛が652点で優勝の可能性を見せる。中盤にはミルクボーイがコーンフレークネタで史上最高得点となる681点を叩き出せば、誰もが和牛の進出かと思ったラスト10番手でぺこぱが誰も傷つけない新しい漫才で最終3位に滑り込む。ドラマの盛り上がりとして完璧なのです。
一方、今大会は決勝進出した3組が中盤の4〜6番手に固まっていて、最初から最後まで目線が離せないドラマがあるという感じではなかったように思います。
その中でドラマチックだったのが優勝したマヂカルラブリーと上沼さんの掛け合いでした。
2017年大会では83点と上沼さんに辛口のジャッジを受け、「一生懸命頑張ってる。頑張ってるのはわかるけど、好みではない」「よう決勝残ったなと思って」とまでの言葉をぶつけられたマヂカルラブリー。野田クリスタルさんは当時、こうツイートしました。
ねえ大恥かいたんだけど
— マヂカルラブリー 野田クリスタル (@nodacry) December 3, 2017
そこから野田さんは2019年のMー1敗者復活戦では「えみちゃん、待っててね〜」 と叫び、2020年のR-1優勝「えみちゃん、ありがとう!」と語るなど、ことあるごとに”上沼ネタ”を披露。
ネタ冒頭で野田クリスタルさんは「どうしても笑わせたい人がいる男です」と”上沼ネタ”で笑わせると、その後も爆笑をさらい、再び決勝の舞台で上沼さんにつけられた点数は94点。全体で見ると見取り図に続いて2番目の高得点で、得点を見た瞬間、野田クリスタルさんは天に拳を突き上げました。
その後も上沼さんが3年前の出来事について「何にも覚えてない」とボケれば、見事優勝した際には野田さんが番組冒頭でことしで審査員は最後といった上沼さんに「えみちゃんやめないで」とコメント。上沼さんとの3年越しのドラマで盛り上げました。
上沼さんは21日のラジオでも「有終の美を飾れましたね」と今年の大会で審査員は終わりだと再び語りましたが、M-1を番組として盛り上げるためには欠かせない人であり、スタッフのみなさんには三顧、四顧、五顧の礼をもって審査員に迎えていただきたいですし、かなうならばぜひ辛口ジャッジを再びお願いしたいところです。
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